再生医療、特にその中核をなす幹細胞を用いた治療は、これまで治せなかった病気やケガを根本から修復する可能性を秘めた、まさに未来の医療です。しかし、この最先端の治療法を誰もが安心して受けられるようにするためには、乗り越えるべき大きなハードルがあります。それが「保険適用」です。日本の医療制度では、健康保険が適用されることで、私たちは医療費の大部分を公的な保険で賄うことができ、窓口での自己負担は一部で済みます。しかし、新しい治療法が保険適用となるためには、国が定めた非常に厳しい審査をクリアし、「有効性(本当に効くのか)」と「安全性(危険はないか)」が科学的に証明されなければなりません。幹細胞を用いた再生医療は、細胞を培養・加工するという特殊なプロセスを経るため、開発や製造に莫大なコストがかかり、治療費が非常に高額になる傾向があります。もし保険が適用されなければ、その費用は全額自己負担となり、治療を受けられるのは一部の富裕層に限られてしまいます。そのため、多くの患者さんにとって、再生医療が本当に身近な選択肢となるかどうかは、保険適用されるかどうかにかかっていると言っても過言ではありません。現在、日本で保険適用となっている幹細胞を用いた再生医療は、残念ながらまだごく一部に限られています。多くの治療法はまだ研究段階であったり、有効性の証明が十分でなく「自由診療」として提供されたりしているのが実情です。